戦前の研精会の折々に四代目小三郎が口述したものを、中内蝶二さんが忠実にまとめられたものの中からいくつかをご紹介させていただきます。


小三郎、六四郎による熱い曲研究の数々。
どうすれば曲を面白くできるか、試行錯誤した記録が残されています。

官女(かんじょ)〜冒頭の置唄復活〜

官女はなかなか難しい唄です。

以前は子ども達のお稽古でされていた曲ですが、子どもにはこの曲の雰囲気は出せません。
内裡(だいり)に宮仕えしていて、檜扇緋の袴の美しい姿から落ちぶれ、漁師の娘のように魚を籠に入れて売り歩くというのですから、さぞ辛いことでしょう。
「こちの在所は〜蓮葉なものじゃえ」は無限の感慨があるように唄わなければなりません。
この曲の冒頭の「見渡せば柳桜に錦する」の一節は、いつの間にか節付けを記憶しているものがなくなってしまい、一般に「こちの在所は」から唄うようになってしまっていました。
小三郎も、はじめはそのように唄っていましたが、何だか突然で、調子がのらない気がするということで、冒頭の節付けを研究して作り、歌詞に残っている通りに唄ってみることにしたそうです。